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Sugarpot 書き下ろし
「守るべきもの」

彼は、私にとって大事な人でした。

でも、彼は今。何を思っているのでしょう?
深く目を閉じて、彼は何を思うのでしょう?

私は、彼の目を見て話し掛けます。
彼に起きたすべての事柄を・・・。
私の知る限り。

けれど、これは私の主観です。
私がこれから話すことがすべて正しいわけではありません。

あなたが話をすべて聞いてくれるのなら・・・。
そのあと。
あなた自身の視線で見つめてみてください。

それでは・・・。話をはじめます。

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私がはじめて彼に会ったのは今から2年前の春。
彼が大学2年生。
私が高校3年生。
私の母が探してきたチラシの「家庭教師」が彼でした。

彼をはじめてみたとき。
いわゆる、第一印象は・・・。
目の鋭い人。
どちらかというと「家庭教師」という印象はしない。
そんな雰囲気がして、すこし「怖い人」っていう印象でした。

でも、そんな彼は。。
最初こそ無口で、私の目を見て話さないような感じでしたが、
何回と回数を重ねるごとに打ち解けていきます。

好きな音楽の話。
故郷の沖縄の話。など・・・
ときおり、勉強以外の話もしてくれたり・・・。

試験間際の冬には、肉まんを買ってきてくれて。。
一緒になってコタツで試験対策を教えてくれたり。。

今、思えば。。
勉強が嫌いだった私が。
それでも、ずっと、やってこれた。。のは。。
彼が教えてくれたから。。
だから、彼と同じ大学に進学することができた。
そんな気がします。

そうして。。
いつしか、私は彼のことが好きになっていました。
それは、ごく自然なことかもしれません。

頭脳は良くて、大人びた視線。端正な輪郭。
すこしシャイだけれど、本当はとてもやさしい心。
私はドンドン彼に惹かれていきました。

そして、私はいつしか。
彼に告白します。

それは出会って1年たった春の日。
私から、合格祝いにと。。
「遊園地」につれてきてもらった日。

夜の噴水。
まばゆいほどの光がきれいに反射する中、
私は告白しました。

「あなたのことが好きです。付き合ってください」

私は生まれて初めて、告白しました。
あんなに緊張したのは、
今までで、あとにも先にもあの時。一度きりです。

私はうつむき加減に彼の言葉を待ちました。
心臓の音が大きくなっています。

「・・・ありがとう」

彼はそう一言言って、私を抱きしめてくれました。
が、すぐそのあとに言葉が耳元でささやかれます。

「でも。。俺には君を守ることはできない。。」

彼は泣いていました。
あんなに鋭い目つきの彼の目から、涙があふれています。

「俺は、君を守れないんだ・・」

私も、彼の涙につられるようにして、
頬をつたわせて、涙をこぼしました。

私は思いました。
守ってくれなくたって良い。
私は、ただあなたがそばにいてくれれば。。。
それで良い。と。。。

でも、その想いを言葉にはできませんでした。
彼の涙がその言葉を封じるのです。

とめどなく涙は出てきます。
彼は、私のことを嫌いじゃない。
けれど、私のそばにはいられないと言う。

私のことを「好き」でいてくれた喜び。
けれど、私のそばにはいてくれないという悲しみ。
その2つの想い。
私は今でも思い出すのです。
すこし、やさしくて・・すこし、つらい想いとして。。。


それからも、彼にはキャンパスでよく会いました。
彼は工学を専攻していて、
なかなか自由な時間ができないという感じでした。

それでも、彼は「好きなことを学んでいるから」でしょうか?
べつに自由な時間など要らないように見えたのです。

けれど。
私と会えば、彼は微笑んでくれました。
お互いに時間があるときは、喫茶店でお茶もしました。

私は彼のことをずっと好きなままでした。

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