TOPページ メールフォームのページ へ サイトマップ へ 最新情報 へ 漫画・アニメ系を読む あなたの作品をご登録します。 趣味・コラム系の読み物を読む 小説系を読む HOME へ戻る
このページは文字サイズの変更が可能です。右のボタンで調節してください。 文字サイズ   
右のボタンをクリックすると目次が出ます。 クリックすると、しおりがでます!  
Sugarpot 書き下ろし


第2章
1

朝、起きたら、これこそ「快晴」の天気。
僕は、ついている。と思った。
早くも運がこちらに向いていると・・・。

朝4時30分。
晴れやかな天気。
僕は窓から海を見て、ひとつだけ伸びをすると、
院内の誰にも気が付かれないように、
となりの部屋の「なごみ」の部屋に忍び込む。

ここは、カギなど其々の部屋についていない。
泥棒など来るわけ無いし、
もしも病人になにかあった時にすぐ近くのものが対応しやすいように。
そんな理由もあるのだろう。

いちおう、なごみに失礼にならぬよう、
気持ちノックをして部屋に入る。
こんな時間。誰も起きていないだろうが・・・。
おきては困る。最小限のノック音にとどめる。

「失礼します・・」
心でつぶやき、部屋の中に入ると・・・。

「おはよ!」

「!?ッ!」
僕は驚いた。
思わず、大きな声が出そうになる!

「おっおはよう・・・」
こっちが驚かされるとは思ってもみなかった。
完全に「僕がなごみを驚かす方」だと思っていたが・・・。

扉を開けたら、そのベッドにちょこんと座って、
パジャマ姿で、こちらを向いて待っているなごみがそこにいた。
それはまるで、僕が来るのを待っているかのように・・・。

こんな時間になごみが起きているなんて・・・。
ホント、考えもしていなかった想定外のことだった。

「どうしたの・・・?」
なごみは扉の前までゆっくりとやってくる。

「いや。べっべつに。。」

「別に。。って?」
「いやぁ。特になんでもないんだけどさぁ・・・」
「特に何でも無いっていいながら、もう着替えてるけど?」

僕は、4時におきて部屋で顔を洗って、歯を磨いて、
髪の毛をWAXで整えて、着替えを済ましていた。
それには、わけがあった。

「・・・。なぁ。海でも見に行くか?」
「えっ?」

最初こそ、驚いてはいたが、すぐになごみは「行く」と答えた。
あっさりと答えた。

そうして、手早く着替えるから自分の部屋で待っていて。と言われ
待ってみたが、なごみは本当に手早く済ました。
女の子だからある程度の時間は覚悟していたのだが・・・。


2

僕となごみは忍び足で、この療養所(病院)を抜けた。
僕らは、許可を得ない上での外出を認められていなかったからだ。
たとえ、それが朝の散歩ですぐ近くの海に行くにしても。
許可無しで出ることは認められていなかった。

そして、そんな簡単に許可も出ない。
ちょっと近くを散歩するぐらいのことでもなかなか許されなかった。
許されても、誰か看護士なり。
何かあった時対処できる人がいないと外出などさせてもらえなかった。

朝の海を2人で並んで歩く。
なんだか、とても爽やかな風だ。
いつも以上に頬を過ぎる海風が気持ちよく思う。

「気持ちいいね・・・」

なごみは「白いワンピース」を着ていた。
上品なホワイト。
そこに淡いブルーのストライプのラインが縦に入っている。
足元もそれにあわせるように「白いサンダル」だ。
すこしヒールの高いサンダルは、砂浜は歩きづらく見える。

海風に揺られた髪先が、すぐ隣を歩く僕に言い香りを配ぶ。
潮の香りとあまい石鹸の香り。
すごく「やさしい」香りだ。

「ねぇ。来斗は海に来たのどれくらい前になるの?」

海というよりも、湖のような穏やかな感じで、
だけれどストレートな強さを感じる視線。
なごみはまっすぐに、まるで僕の心を透かすような眼差しを向ける。

「うん・・・。そうだな。ここにくる前だから。。もう2年くらいたつなぁ。
 なごみは・・・?」


「私?。。私は。。初めて・・。」
「えっ・・・!?」
「・・・そうか・・初めてか・・・」

「うん。」

夏がやってくる。
もうすぐ夏がやってくる。
おととい降った雨が、もう夏を呼んでくるような雨の降り方だった。
「ザァー」という音とともに激しく窓を打ちつける雨。
きっと、あの雲が夏を連れてくるはずだ。

「私ね。ここに来てから一度も海に連れてきて貰ったことが無かった・・・
 でもね。それは私がそう望んだのかもしれないの・・・
 私が『行きたい』って言ったら、きっと先生(お医者さん)もそうしてくれたから・・・。
 だけど、言わなかったんだ。だから・・・。ね?」

「そうか・・・。いっつも窓から海見てたからさ・・・。
 海。好きなのかなぁ・・・。って思ってたんだけど・・・初めてか。。」


「うん。海は好き。キレイだから・・・。
 誰もいない朝の波の音。波のしぶきでできる七色の虹。
 こんなに近くで見れて嬉しい。。」


波際を2人歩く。
足元をひんやりとした海水が足の甲だけ冷やす。
なごみは、足元で繰り返す波のプリズムを見ている。

僕は、時にふと思うことがあった。
この子。なごみが何をしたのだろうか?
この子。なごみは何を望んでいるだろうか?と・・・。

生まれてすぐ、ここに来て。
自分のしたいことも少ししかしないで・・・。
それも 「その少しのしたいことをしたこと」 ・・・。
それだけで満足して・・・。
いや、自身を諭すように納得して。。

僕は、彼女と出会って。
まだ、1年も経っていない。
けれど、彼女と日々を過ごしていて。
彼女の生活や考え方に触れて・・・。
僕はおせっかいかもしれないが、
彼女には、もっともっと多くの幸せを感じて欲しいと願った。

だから、昨日。
僕は決心した。
彼女を連れて、外に出てみようと・・・。

正直、一緒について来てくれるか?
不安はあった。
でもそんな不安は杞憂だったのかもしれない。
僕さえ誘えば、もっと前にでもこうして一緒に外に出ていたかもしれない。
そんな風にさえ、今となっては思えた。


「なぁ。なごみ?」
「うん?」
「なごみ。お母さんに会いたいって言ってたよな?」
「う、うん・・・。会いたいけど・・・。」
「今から、会いに行ってみないか?」
「えっ?でも・・・。先生(お医者さん)に言ってきてないから・・・。」
「それなら、大丈夫。置手紙してきたから・・・。」

空はほのじろむ空から、すこしづつ明るさをまして、
青い色が濃くなってきている。
暑い日になりそうだ。

「・・・」
「・・・行く。行きたい。」

次へ。

へ 
Copyright © since 2003 読み物.net & 砂糖計画 All rights reserved.
Produced by 読み物.net & 砂糖計画 since 1999
Directed by 『Sugar pot』
& はっかパイプ & 砂糖計画 since 1999
mail for us
mailto:menseki@yomimono.net