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Sugarpot 書き下ろし
タイトル 「無題」


第3章 3回目は・・・マフラー巻いて・・・

『明日は土曜日か・・・』

期末試験も終わり、クリスマスを1週間後に控えていた。
何時の間にか、季節は冬になっている。
亜季はクリスマスのことで頭がいっぱいだ。

「ね。プレゼント。もうわたし決めたんだ。」
「何?」
「・・・リング。」  

「はぁ?リング?俺は指輪とかしない主義なんだけど・・・」
「!?なに言ってるの?イヤリングっていったんだよ。私がもらうんだから?」
「・・・そういうこと・・・ね・・・」

亜季といると飽きない。
何と言うか。媚びたりしているところが見あたらない。
普通、こんな感じのことを言われたらあんまりいい気はしない。けれど、亜季は違う。
ほんとに指輪やイヤリングでないと駄目ってわけでないのがわかるから。
きっと、プレゼントさえあげれば何でも喜んでくれるだろう。が、こう言われると弱い。

「ま。考えておくよ・・・」

外を歩いてコンビニを見かけると寒さから立ち寄ってしまう。
そんな季節になって、中華まんが恋しい季節。
朝夕は、白い息を手に吹きかけ吹きかけ歩き、街歩く恋人たちはマフラーを巻いて、肩を寄せ合い歩く。

でも、俺たちは手をつなぎもしなかった。
亜季も俺もそういうタイプではないのだ。
又、そんなところが亜季らしくて好かった。

「あっ。そうだ。今日早く帰らないといけないんだぁ。」

「!?」
「おかあさんにいわれたの。今日、親戚のうちに行くって・・・」


「それじゃ。早く帰らないとな・・・」
「うん。ごめん。先に帰るね。ホント。ごめんね。じゃあね。」
亜季は、制服のブレザーを振り乱しながら駅の方へ駈けて行く。

「亜季!気をつけてな〜」

少し振りかえって手を振っている亜季の姿がかわいく見えた。

俺は一人で帰ることになった。
一人になると人間は物思いに浸るか、考え事をする。
このごろは、一人でいる時間が減った。というより、それは一人で考える時間が減ったことであった。

うちに居ればそれなりの過ごし方があるし、帰宅時間の電車の中なんかは格好の時間だったのに、
今は亜季と帰ることが多くなったから・・・。
暇な時間ぐらいしか考えごとなんて出来ない。そう、寝る前のベッドの中とか・・・

昔からものを考えるとき、上を向く癖があった。視線が自然とそうなる。
そらには、もう暮れかけた太陽がすくないぬくもりをつくっていた。

俺は、ただ空を見ていた。
冬は空気がチョット澄む。
だから、星がよく見える。
まだ、青いうちから一番星が光っている。

『そういや、あのプラネタリウムってまだあるのかなぁ〜』
そう、あの渋谷のだ。
なくなるとか、耳にした気がするのだけれどそれからどうなったかは知らない。

俺がまだ小学校の低学年の頃だった。えんそく。というか見学に行ったプラネタリウム。
駅前にあるビルの屋上。
おわんを逆さにしたような半円を描いた建物に胸を躍らせたのを今でも覚えている。
中に入れば、昼間なのに真っ暗い。
「正面左手を見てください。これが北斗七星です。ひしゃくの形をしていますね・・・」
いつしか、アナウンスがどこからか聞こえてきて説明をしてくれる。


でも、あれから何度行ったことがあったろう・・・?一度行ったのは覚えているけど・・・
『こんど、亜季といって見るかな・・・』そう思った。
その瞬間だった。


「こんにちは」
俺は誰かの両手に目を隠された。

「ね。誰だかわかる?」
女の子の声だった。
それも、どっかで聴いたような気がした。
手はとってもあったかかった。

いきなりで驚きはしたが、こんなとき意外と冷静になる。
冷静に、冷静に、あたまを働かせる。


「わからない・・・?」

亜季ではない。それはすぐわかる。
とりあえず、女の子で親しかった子を巡らせる。
そのなかでもこんなことをしそうな子を思い浮かべる。
焦りはしなかった。でも、全くわからない。

北風が冷たい。
その女の子のマフラーが手に触れる。


「ね。わからない?」

何度、考えても思い当たらない。
どっかで聴いたことのある声の気はする。
でも、それ以上はいくら考えてもわかりそうもなかった。


「ごめん。わからないや・・・」

素直に言ってみることにした。
すると、そのあったかい手はゆっくりと下ろされていった。

俺は振り返り、その子の顔を見た。

「!?」

『あの娘だ・・・』
いつか、渋谷の交差点で見かけたあの子・・・
かわいい子だったからか、印象的な記憶からか?顔を見て、すぐわかった。


「わかってくれたみたいだね・・・」

その娘は、にこやかな笑みをつくってみせる。
あのときのまなざしの強さはわすれない。その瞳がこっちを再びみつめる。


「こうして話すのって、何年前だったかなぁ・・・」
その娘は懐かしがるように僕の顔をじっくりと見る。
すこしあまい香りがする中で、近づくその娘のかおを見た。
それでも、よく見ても。わからない。

「ごめん・・・」
「えっ!?」
「あのさ・・・俺。君のことが・・・その、思い出せないんだ。何処で会ったんだっけ・・・」
タイミングを逃すと後々勇気が必要になるのがわかっていた。
だから、この娘が誰かと勘違いしていたり・・・あいまいなことを言ったりして、
大変なことにならないように、思い切ってハッキリ言った。

「何処でって・・・ほら、あの渋谷の交差点・・・駅前の。」

「違うんだ・・・そうじゃなくて。」

「じゃあ。なに?」
「だから・・・いつ君と知りあったんだっけ・・・?いつから君と・・・」
「!?」
その娘はすこし戸惑った表情を見せて俺を見つめた。
まるで、こころを見透かすようにきれいなまなざしで・・・


「そう・・・覚えていないんだね。・・・そうだよね・・・でも、しょうがないよね・・・」
まるで、自分に言い聞かせるように独り言のようにつぶやくとその娘は、
「うん。でもこうして逢えたんだもんね。」と、今度は自分を諭すように話して、微笑みを空にむけた。

「ごめん・・・俺。記憶力が良いほうじゃないから・・・」
なんだか、少し残念がってるようにみえた。

「ううん。しかたないよ。・・・それより、これから何かようはあるかな?」

「いや。別に・・・」
「そう?それじゃ。一緒に喫茶店でもいこうよ。ね?」

第3章 終わり

第4章へいく。(第4章も読む)


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