エピローグ
                
                
                今。私は彼の前に居ます。
                今。彼は私の目の前に居ます。
                目を閉じた彼は、ごく自然に眠っているように見えます。
                
              
私は、彼の手を握り締めます。
                いつの間にか、頬を涙が伝って彼の手にこぼれます。
                拭っても、拭っても、溢れます。
              私は「彼」にとって、どんな存在だったのでしょう。
                「彼」は「かえで」さん を守れなかったことを悔やんでいましたが、
                私は「彼」を守れなかった。
                私も「彼」を助けてあげられなかった。
              そう思うと、私は情けなくて・・・。
                あとからあとから、涙がとめどもなく流れてきます。
              彼は、自分を傷つけてでも、
                私のために・・・。
                私を守る為に・・・。
                私を守ってくれたのです。
                あんなに「守れない」と、言っていたのに・・・。
              でも、私は思います。
                「守ってほしいなんて、思わないから・・・。
                 守ってくれなくて良いから、そばに居て欲しい」
              私は「彼」が好きだから。
                
                
                その思ったその時でした。
                私の頬からこぼれた涙が、握り合った2人の手と手にこぼれた時でした。
                
                「・・・!?」
                
                私は強く、強く、彼の手を握りしめました。
              
              END