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Sugarpot 書き下ろし
手品師の粉雪

第1章

 1

少し和らいできた寒さ。
それでも夜はコートとマフラー。
それに「コンビニ」の「中華まん」が恋しくなる。

週初めの夜。
バイトを終えて、アパートのある最寄りの駅「南虹ヶ丘」から歩いている。
そんな僕に、「コンビニ」のあかりは、まるで海のいさり火のように、
僕を吸い寄せるような、そんな力さえ感じる。

「コンビニ」に入ると、一通り店内を巡るのが僕のいつものパターンだ。
一人暮らしをしていると、どうも。コンビニエンスストアが一番立ち寄る場所になる。
そうしているうちに、「パターン」ができる。
まず、ドア間近の「雑誌」が並ぶ棚に一通り目を通して、
そのまま。お弁当類が並ぶ方へ向かう。
それから、お菓子類。に飲み物。
最後に「明日の朝食用のパン」を物色して、レジに向かい、
いつもの「兄ちゃん」に。
いつものタバコを頼んで。。ついでに「中華まん」を選択する。
これがパターンだ。


「ふぅ〜」
暖かい。ぬくい。
暖房の効いた店内は、ほっと一時の安らぎ。かも知れない。
大げさに言うなら・・・。

僕はいつもどおり。パターンを遂行した。
弁当は、全ての種類をたべてしまい。
さすがに飽きも感じてはいるのだが・・・。
でも。他の店に行くのは面倒なので、「からあげ弁当」をひとつ手にもち、
500mlのペットボトルのウーロン茶。
明朝用の「あんぱん」を一つ。をもう片方の手にもってレジに向かった。

 2

僕は田舎から上京してきて、もう3年が経つ。
マジシャンを夢見て、上京してきた。
が。そんなこと。両親に言ったら相手にしてもらえるはずも無い。
だから、「大学」にいちおう籍だけは置きつつ。
昼は引越しやのバイト。
その他の時間で、師匠である「大松一斉」(だいまついっせい)について勉強している。
この師匠がひじょうに「いい人」なので、僕は、かって気ままにバイトしながら、
付き人・弟子でいられる。
まぁ。弟子の僕から言ってはいけないのだろうが・・・。
「人が良すぎて、売れっ子になれない」のが、残念なくらいだ。

ひとりの部屋に戻る。
「ただいま〜」
誰もいないくらい部屋に木霊する僕の声。

暗い部屋に、ぽつん。とライトが明るい。
留守番電話のある印だ。
めったに点かない留守電の明かりがまぶしく思える。

「誰だろ・・・?」
僕は部屋の明かりもつけずに、すぐに留守電をチェックした。

「こんにちわ・・・」
聞き覚えのある声だ。

「かすみです・・・」
「元気ですか・・・?」
「今度の土曜日に、東京の親戚のおうちにおじゃますることになりました。」
「・・・もし、よかったら・・・。会いたいです・・・」
「渋谷の駅前のハチ公前。に午後1時に待ってます・・・」
「何か。用事があるかもしれないですね・・・?」
「その時は・・・。また。今度にします・・・。」
「1時30分までは待っています・・・。」
「それじゃぁ。会えたらあいましょう・・・」

『ガチャ・・』

最後の受話器の切り方がとても優しかった。

 3

かすみの声はひさびさに聴いた。
優しい声だ。
2年ぶりぐらいだろうか・・・?
以前、渋谷であったのが・・・2年前の冬だから・・・。

かすみ。北里かすみ。
彼女と初めて会ったのは、中学校の2年生。
同じクラスになったことで出会った。
ファーストインプレッションは、「まじめ」な女の子。といった印象だった。
言葉遣いがとても印象に残る子だった。
髪は黒髪で肩までのセミロング。
よく、授業中なんかは、髪留めのピンでとめていた。

出会ってから、いくらか過ぎた日。
1学期の委員会決めで、お互い「図書委員」になったことで、
仲良くなった。

彼女は自分から「図書委員」になりたくてなった。
それに比べて・・・。僕は、押し付けられて。仕方なくなく「図書委員」を勤めることになる。

2人で放課後、図書室で「本を借りる人・返す人」を待つ。
ほとんど、決まった人が来て・・・。返して、又借りて帰る。
それを「4時30分」まで、2人で「図書委員」を遂行する。

何がたのしいのだろうか・・?
と、思ってはじめた「図書委員」も・・・。
「図書委員」は、思ったよりは。楽しかった。

それは、「かすみ」と一緒だったからかもしれない。
彼女は「まじめ」に仕事をこなしながら。。
その仕事を楽しく行っていた。

僕はそれまで「まじめ」なんて、「良いことじゃない」と思い込んでいた。
それを「替えた」のが。。「かすみ」だった。

僕は、かすみの声の入ったテープを聞き終えると、
部屋の明かりを灯すと同時に、カレンダーに書き込む。
「今週の土曜日。3月20日。渋谷」

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